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アップルはモバイルARの夢を見るか?

「アンドロイドは〜」のほうが収まりは良いけど、ここはアップルです、Apple Inc.です。と言うのも、AppleがAR(拡張現実)界のリーディング・カンパニーのひとつMetaioを買収したから。すでにMetaio社のWEBサイトでは製品の販売や関連する情報は取り下げられている。これまでARには正面切って取り組んでいなかったAppleが、Metaioを得て何をするのか、興味津々です。

Metaio Web Site

ここ数ヶ月を振り返ってみると、Googleは謎に包まれたARスタートアップMagic Leap社に巨額出資を行い、Microsoftは自社開発のARゴーグルHoloLensを発表したよね。Facebookに買収されたHMDの革新者Oculus社も、さらにSurreal Vision社を買収してARに接近中。といったようにIT界の主要プレーヤがARを重要視していることが分かる。そこへAppleも参入するというわけ。

未知数のMagic Leapはさて置くとしても、HoloLensもOculusも頭部に装着するディスプレイが主役。対するMetaioはあくまでもスマートフォンで動作するソフトウェアでしかない。順当に考えれば、Appleが取り込もうとしているのは、その延長線上にあり、いわゆるモバイルAR、つまりセカイカメラARARTがOSレベルでサポートされることになる。数年間の苦節(笑)を経て、モバイルARが桧舞台に躍り出るや否や、これは楽しみですね。

Appleはもっとも革新的なITカンパニーと評されるほど未来志向だけど、その未来は安っぽいSF映画に描かれるようなキラキラのハイテクじゃない。それは日常生活に違和感なく溶け込み、歴史や文化に支えられ、ある意味で古典的(Classic)ですらあるような未来だと思う。それを端的に表すのがCMフィルムで、来年あたりには何気ない日常生活の場面場面でiPhoneをかざす様子が描かれているかもしれない。あるはメガネかもしれない。それはモバイルARの最後の1マイルね。

Apple Watch TV Film

クラウドの再定義

誰でも苦手分野があるけど、Appleの場合はネットワーク・サービスだろうね。この10年間だけでもiToolsに始まり、.MacからMobileMeへと変遷するものの、MacやiPhoneのようなレベルにはほど遠かった。

これはデバイスでのユーザ体験とネットワークでのユーザ体験とは違う、ってことなんだろうね。なぜって、MobileMeほどGUI的に(外見的に)洗練されたネットワーク・サービスはないと思うけど、でも使いにくいよね。むしろ、ネットワークに素敵なGUIをくっつければ使い易くなると思ったのがMobileMeだったんじゃない? 見当違いも甚だしい。

そんなAppleが起死回生とばかりに巨大データセンター込みで仕掛けるのがiCloud。お得意のアイなんとかってネーミングに腐食気味だけど、これがコケたらヤバいってくらい力が入ってる。WWDC2011のキーノートでも明らかなように、iCloudはiOSデバイスの母艦たるMac/PCを不要にしてしまう。もうコンピュータは要らない、ってこと。この転身は遅過ぎたくらいね。Androidはとっくにそうだったんだから。

icloud-logo

それではiCloudって何?って言われても、これだぁ!って目に見える実体がない。MobileMeやGoogleなどの一連のサービスがWEBサイトを示せば雰囲気が伝わるのとは大違い。クラウドって様々な定義があるけど、なんとなくSaaS(Software as a Service)っぽいものを連想してしまうのが悪いクセ(私も)。

iCloudはSaaSじゃなくってPaaS(Platform as a Service)だね。あるいはIaaS(Infrastructure as a Service)。そしてユーザが接するのはWEBアプリではなくネイティブ・アプリ。すでに425,000個もあるアプリを利用しない手はない。Appleは明確に唱っている、「iCloudはあなたの様々なアプリケーションとシームレスに統合」と。

まとめると、こーゆーこと。

  • コンピュータはオシマイ→モバイルで行くぜ!
  • WEBはダメ→アプリで行くぜ!

つまり、これまで以上にアプリ開発者が活躍の場が広がると思う。Mac中心主義だったデジタル・ハブ構想を捨て、iOS/OS X中心主義のクラウド構想に移行するターニング・ポイントがWWDC0211ってことになる。それを支えるのがiCloud。

もちろん、Macは制作ツールとして存続するけど、一般ユーザが使うものではなくなる。WEBも簡易な情報提示の場として有効だけど、高度かつ体験性の高い処理はアプリが担う。はてさてAppleの目論み通りにコトが進むかどうか、お手並み拝見と参りましょう。

【追記】iCloudはiOSデバイスだけでなくMacでもWinでもOK。たぶんAndroidなど他のOSでもOKな気がする。そんなワケでクロス・プラットフォーム展開には支障がないハズね。