Uroboros Torch

ウロボロスのトーチ / Uroboros Torch , 2012
絵画(8点)、モバイル・デバイス、コンピュータ、スピーカ

作品概要

「ウロボロスのトーチ」は8枚の連作絵画をiPhoneなどのモバイル・デバイスを通して鑑賞するAR(拡張現実、変容現実)型の作品であり、映像効果と音響効果を伴う。これらの絵画、映像、音響によって人為と無為の流れ、そして悠久の時間の中で循環する永遠性を表す。

世界で最も素晴らしい自然はどこにあるのだろう?それは例えばチェルノブイリやDMZ(非武装地帯)に違いない。最も危険であり、誰も立ち入らない地域こそが自然の宝庫になるからだ。もしかすると此の国も彼の地もそうなるかもしれない。

あの夏の日、転倒して地面に打ちつけられて見た幻影。ひび割れたアスファルトの隙間から生える草花。道路の向こうに草原が広がる。倒壊した街は既に森が飲み込み、そこでは異形の動物が飛び跳ねる。だがやがて楽園も砂塵に帰するだろう。

死と再生、自らの尾を飲み込む蛇、ウロボロス。その円環状に循環する時間と事象を篝火をかざして見る。再び荒野に花が咲く。遠くから響き渡るのは雷鳴、あるいは汽笛かもしれない。古い城壁に刻まれた未来の痕跡を読み解く、ウロボロスのトーチ。

鑑賞方法

鑑賞者にはiPhoneなどのデバイスが手渡され、鑑賞者はデバイスを絵画にかざして作品を鑑賞する。このデバイスの画面には背面カメラの映像が表示されるので、ちょうど透かしガラスのようにデバイスの向こう側の風景が見える。鑑賞者がデバイスを通して絵画を見ると、その一部または全体が変化し、絵画に描かれたものが動き出し、描かれていないものが見えてくる。それは例えば、枯れていた滝に水が流れ出し、骸骨が踊り出す。あるいは、雪が舞い降り、帆船が出航して迫ってくる、といった具合である。この時同時に見ているものに応じた効果音が鳴り、複雑な音響効果によって音が空間的に広がる。

作品内容

ウロボロスは、古代の象徴の1つで、己の尾を噛んで環となったヘビもしくは竜を図案化したものであり、トーチ(松明、篝火)は、光源や照明として使うために、手で持てるようにした火のついた木切れなどである(いずれもWikipediaより)。この作品では、ウロボロスは長い時間をかけて循環する事象の流れを示し、トーチはかざすことで事象を見い出す行為を示している。

連作である8枚の絵画には、有史前から古代、近代、現代、未来へと続く事象が描かれる。これらは狩猟、農耕、都市、宗教、戦争、工業、情報など人の営為による文明の歴史に他ならない。そして、最後の絵画では最初の絵画に戻ることが示唆されるが、それが文明の終焉であるとは限らない。

個々の事象は独立してモノクロームで描かれる一方で、いずれの絵画にも水彩絵具を垂らしたカラフルな模様が連続的に描かれている。この模様によって人為を取り巻く自然や無為、そして、個々の事象を超越して連綿と続く連続性が提示される。このような循環する永遠の流れ、すなわちウロボロス的な流れを想起するならば、我々が生きている僅かな瞬間や、生起する事象の儚さにも思い当たるかもしれない。

絵画をそのまま鑑賞するだけでなく、iPhoneなどのデバイスを通して見ることで映像効果と音響効果が得られる。この時、絵画に描かれた事象が動き出し、描かれていないものが現れ、呼応する音が鳴り響く。このようにして絵画に封じ込められた、より深く豊かな物語が紡ぎ出される。これは暗闇で篝火をかざすように、見えないものを見い出し、見つけたものをより詳しく調べる行為に似ている。

それはアニメーションの由来のように、動かないものに命を吹き込み動きを与える行為でもある。実際にも、これは幼児でも熱中するほど見る喜びに溢れた直感的な仕組みになっている。一方で、何かを見つめ、何かに働きかけることは人の営為の本質であり、絵画に描かれた事象の根源である。つまり、この作品自体とともに、この作品の鑑賞もまた永遠の循環であるウロボロスに取り込まれていることになる。

展覧会

ウロボロスのトーチ 赤松正行+展
会期:2012年8月18日〜2012年9月1日
会場:CAI02 raum1
ゲスト・キュレータ:カジタシノブ

ウロボロスのトーチ+ARART展覧会
会期:2013年2月9日(土)~2月17日(日)11:00~21:00
会場:パリミキ渋谷店

ウロボロスのトーチ @ IAMAS2013
会期:2013年2月21日(木)〜 2月24日(日)
会場:ソフトピアジャパン・センタービル

Double Sense / ウロボロスのトーチ+モーメンツ・オブ・ブルーム
会期:2013年5月5日(日)〜 5月31日(金)
会場:夢創館

展示方法

8枚の絵画はキャンバス地用紙にカラー印刷し、幅1,000mm、高さ804mm(F40型)の木枠にフローティング張りする。展示空間は幅5m、奥行き8m、高さ3m以上で、左右の壁面に4枚ずつ等間隔に絵画を架ける。絵画にはそれぞれ独立した照明をあてる。

また、展示空間の天井付近に4台のスピーカを設置する。それぞれのスピーカは4チャンネルのオーディオ・インターフェースを通じてコンピュータに接続する。また、特別なアプリをインストールしたiPhoneなどのデバイスを数台用意し、鑑賞者に1台ずつ貸与する。デバイスとコンピュータはWi-Fiによるワイヤレス・ネットワークに接続する。

ARシステム

この作品で用いるソフトウェアは、ARARTと呼ぶモバイルAR(Augmented Reality、拡張現実)システムをベースに開発している。このシステムでは背面カメラの映像を画面にそのまま表示すると同時に、その映像を解析して予め登録した画像を検出する。そして、検出した画像に応じて異なる画像を重ね合わせることで、現実世界の映像が変容して見えるように表示する。このような仕組みによって、ARARTは変容現実(Alternated Reality)と呼び得るような表現を可能にする。

検出する画像はQRコードのようなマークではなく、写真やイラストなどの自然画である。また、特定の画像が検出された場合は、画面上での位置、大きさ、傾きを計算し、その空間特性に合うように異なる画像をオーバーラップして表示する。オーバーラップする画像は、連続して切り替えられるので、アニメーションとして見える。そして、検出された画像は常にトラッキングされるので、デバイスを傾けたり、動かしたりしても不自然に見えることはない。

さらに、特定の画像を検出した場合は、デバイスから画像に割り当てられた音を鳴らすとともに、デバイスからワイヤレス・ネットワークを通じてコンピュータに信号を送る。コンピュータではデバイスから鳴った音に基づいて、数百ステージのディレイ・ラインからなる音響効果を加えて4チャンネルのスピーカから空間的に応答する音を鳴らす。

絵画出力

プリンタ Canon iPF8300
用紙 Canon キャンバス(マット)ロール紙 Hahnemuhle Canvas Artist 340g 44インチ(商品コード:CANON 0572V622)

使用機材

デバイス Apple iPhone 4S (16GB, Black) 6台
コンピュータ Apple MacBook Pro (15″, Early 2011) 1台
オーディオ・インターフェース Roland FA-66 1台
スピーカ Bose MW-1W 2セット(4スピーカ)
Wi-Fiベース・ステーション Apple AirMac Express 1台
その他 照明、FireWireケーブル、オーディオ・ケーブル、電源ケーブル

開発環境

iOSアプリ Apple Xcode 4.3 / iOS SDK 5.1
OS Xアプリ Cycling’74 Max 6

制作者

赤松正行(ディレクション、システム)
北村穣(グラフィックス、デザイン)
和田純平(プログラミング、ネットワーク)
白鳥啓(マネージメント、サウンド)

制作協力

IAMAS、アマナイメージズ、明石瀬里奈、神谷典孝、堂園翔矢、中上淳二、二宮諒、宮城良、佐藤薫(EP-4)

記録撮影

写真 赤松正行、北村穣、カジタシノブ、Younghyo Bak
ビデオ Younghyo Bak

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