それからのアリス

福岡でのバレエ公演「それからのアリス」が無事終了。出演者や関係者が多いし、場面が細かく構成されているので、全体像を把握するだけでも大変でした。だけど、サイトウマコト氏の卓越した構想&振り付けと、それに応えるチビッコから大御所まで数十人のダンサー達の見事な踊りで、素晴らしい作品になったと思います。心配されていた集客も大ホールにぎっしりで、興行的にも成功だったみたい。

で、ストーリーやダンスについて書くのはおこがましいので、私が担当した映像パートについて少々書きます。

まず、前半はカーテンに模したスクリーンに、小型のワイヤレス・カメラを指先につけたルイス・キャメラ(ルイス・キャロルのモジリね)が映像を送り込みます。ワイヤレス・カメラの映像はハイキーでノイズ混じりだし、時々は大きく乱れるんだけど、それが怪しげな雰囲気を醸し出します。こーゆーのはデジタル処理では出せない味ね。Time Machine!の映像エンジンを使った時間的な処理は、そこはかとなく使った程度にして、節度ある進行だったハズ(笑)。

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前半のおぼろげで小さめの映像(3m×2m)に対して、後半は背後の黒幕が開いて、ホリゾント幕いっぱいに巨大映像(20m×9m)を1万ルーメンのプロジェクタで投影。ワイヤレス・カメラを含めて3台のビデオ・カメラの映像を元に、ATOMxGALAXIESエンジンによって無数(ではないが沢山)の球体が乱舞します。そして、終盤では照明が落とされ、無数(ではないが沢山)の球体が雪のように静かに降り昇る中で、最後の大仕掛け(ヒミツ)が登場。現実と幻想を綯い交ぜにして、さぁ泣いてください、って感じでした(ハート)。

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全体を通して映像として狙ったのは、「見えないものを見せる」ということでした。単純に言えば、正面を向いて佇むダンサーの背中の美しさを捉えたかった訳です。踊り終えたダンサーが、舞台袖で荒い息をついている姿も取り込もうかと思ったくらい。具体的には、ルイス・キャメラが動き回って、様々な角度や距離から捉える映像に端的に現れていますね。ズームアップされた巨大映像に映し出される表情や微細な動きもそうだし、無数(ではないが沢山)の球体が示す運動は、ダンサーの踊りが引き起こす世界の変化(=風が吹けば桶屋が儲かる)を視覚化しています(きっと)。

それから、個人的に設定した課題や乗り越えるべき試練(笑)もありました。台本のある舞台に対して、単なる映像のポン出しは低能過ぎるし、かと言って、すべて即興で乗り切るほど達人でもないですからね。大道具代わりに情景的な映像を映し出すのは馬鹿みたいだから、造形的な映像を作る気はない(&その能力もない)。そして何よりも、全体の進行の中での統一感と多彩さのバランスを取らなければならない。映像処理自体は、いくらでも派手にできるんだけど、抑制を効かせた上で最大限の効果を狙うのが大切ですからね(当たり前)。

他にも考えていたことが沢山ありますが、長くなるので以下省略。さて、その結果がどうだったのかは、ご覧いただいた観客の皆さんの判断です(怖い怖い〜笑)。

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ちなみに、今回は初めて本格的にLemurを使いましたが、このようなメディア・パフォーマンスには最適なコントローラだと思います。物理的なコントローラは一般的なミキサーや楽器などを模しているので、オビにタスキで、どうしても無理が生じちゃう。それに対して、Lemurの自由度の高さは有り難くって、次々と起こる変更にも柔軟に対応できますからね。

ただし、痛感したのはLemurを補助的に使うのはダメってことです。つまり、操作対象はすべてLemurに載せて、Lemurですべての操作をするのがモアベアーなんじゃないかな。Lemur、コンピュータ、そして舞台と3ヵ所も意識するのは集中力を削がれちゃいますから。これは音楽の演奏でも一緒ですよね。と言う訳で、もうすぐ別の作品で演奏しますので、Lemurに再チャレンジです。

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