先のエントリーで記したように、Appleが買収したモバイルAR(拡張現実)関連会社Metaioは、すでに既存のユーザのサポートのみに移行していて、その製品やサービスを伺い知ることは難しい。ただし、iOSアプリはまだダウンロード可能なので、ARブラウザであるJunaioや、物体認識ツールであるMetaio Toolboxを試すことができる。また、今年の初めにMetaio関連のワークショップを行ったので、その際のレジュメも公開しておくね。この資料やiOSアプリには、Appleが目指すARの一端が含まれているかもしれない(含まれていないかもしれない)からね。
ダウンロード:「なんちゃってAR制作ワークショップ」レジュメ
さて、このワークショップでは、Metaio Creatorなる簡易AR制作ツールを利用した。以下の図のようなオーサリング環境で、認識するターゲットと対応するリソースを指定するだけでOK、プログラム・コードを書く必要はない。これはMacの内蔵カメラで即座にプレビューすることができ、アップロードすればJunaioアプリによってiPhoneで動作する。あっけないほど簡単であり、アイディア次第で多種多様なARを素早く実現できるようになっている。
Metaio Creatorが備えるターゲットのトラッキング(認識)方法は、図のように6種類もある。これだけの認識方法をひとつのエンジンで統合しているのは立派。やや水増し感もあるけどね(笑)。
このうち、3次元物体を認識するObject Trackingや建造物を認識するEnvironment Trackingでは、そのデータをiOSアプリのMetaio Toolboxを使って制作する。iPhoneをかざして物体や建物の周囲を回ってスキャニングすれば、3次元位置として特徴点が蓄積されていくことになる。
ターゲットが認識された時にトリガーされるリソースも15種類と豊富。静止画や動画、3Dモデルなどを表示したり、WEBサイトの閲覧やツイートの投稿、カレンダーの作成などもできる。必要であればタイムラインによるアニメーションや、簡単なスクリプトの実行も可能。こちらも水増し感がちらほら(苦笑)。
このように見ていくと、Metaio CreatorはARのFlashを目指していたように思える。しかし、Flashがそうであったように、誰でも簡単に作れるものの、最大公約数的な大雑把なコンテンツしか作れないという危惧も強かった。実際にも作例のモナリザは、ARARATのほうが遥かに認識の精度と安定感が良く、イメージの表示もARARTのほうが自然で違和感がなかった。自画自賛のようだけど、これはワークショップの参加者も同意していたよ。
ただし、MetaioにはMetaio SDKなど高度な開発環境も提供されていたので、コード・レベルでチューニングすれば効果的な結果が得られるかもしれない。MetaioはIKEAやAudiなど大手企業のアプリに採用された実績を持つので、それは単なる営業努力だけではないよね。ISMARなど学術会議でのコンテストも勝ち得ている。だから、技術的な基盤は堅牢で性能は高いハズ。AppleがMetaioの何に魅力を見出し、モバイルARをどのように活用するのか、それこそが重要だよね。
ところで、MetaioとはメタI/Oのこと?