iPad」カテゴリーアーカイブ

iPadバッグを作ろう

iPhoneでは思わなかったんだけど、何故かiPadでは高級ネットブック風ノートを作ってみたり、カバンを作ってみたりしたくなります。このあたりにiPhoneとiPadのキャラクターの違いがあるような気がしますが、それはさておき….私が欲しいiPadバッグのアウトラインをCCライセンス(BY)で公開します。我こそはと思われる方は、これを作ってくださいませ(そしてご連絡くださいませ)。

まずは、指描きのアイディア・スケッチから。

ipad_bag_idea_m

次いで、もう少し詳しい図解スケッチ。情けないモデリングは気にしないでください(笑)。

ipad_bag_sketch_m

Creative Commons License
iPad Bag by Masayuki Akamatsu is licensed under a Creative Commons 表示 2.1 日本 License.

このカバンのキモは、こんな感じ。

  • 表面のフラップを開けてスグに4台のiPhoneにアクセス可能。
  • iPadしか入らない中央のボックスはクリーニング・クロス付き。
  • 背面には小物を効率よく収納できる2段のボックス。

iPad収納部分にフタを付けるとか、フラップがクリーニング・クロスを兼ねるとか、細部はいろいろとリファインする必要があるかもしれませんね。ライセンスとしては改変自由ですので、是非より良く改善してくださいませ〜

[追記]museという製品は「内側はTerahedron マイクロファイバーで作られており、iPadを収納している間に汚れや指紋を除去します」となってますね。クリーニング・クロスの素材として良いかも。

ちなみに、このカバンの元ネタはLANVINのクラッチ・バッグ(ショルダー付)です。このカバンはiPhone登場以前にCraftwifeさんからいただいたのですが、これが本当に良く出来ていてスーパーお気に入りなのです。ただ、iPadは収められないし、すでにLANCELの現行ラインナップからは外れてるみたい。

lancel_bag

iBookstoreで個人出版

iPadとともに大注目されているのが電子書籍なんだけど、再び日本のガラパゴス閉塞感が立ち込めかねない雰囲気。でも、シガラミのない(たぶん)個人としては、そんな特殊事情は無視するしかないでしょ!と思うんだよね。ってことで勝手にやっちゃいます。

まず、電子書籍のプラットフォームとしてはiBooks/iBookstoreを選択。現時点ではiPadオンリーながら、OS 4.0からはiPhoneにも提供されるらしい。対抗馬としてAmazonのKindleも考えられるけど、ボタンやキーボードがゴテゴテしているデバイスはキライなので即却下。

iBooksのファイル・フォーマットはePub。他にもGoogle BooksやBarnes & Nobleのnookなど対応しているプラットフォームは多い。MacやiPhoneでもStanzaなどのリーダーで閲覧できる。ePub書籍を作成するにはSigilなどのオーサリング・ツールやCalibreなどのコンバータを使う。ePubの中身はXHTML 1.1/CSS 2/SVG 1.1で記述するので、イザとなればテキスト編集できるし、もちろんゼロからの手書きePubもできるハズ。

そんなこんなでePub書類が出来れば、それをiTunesにドラッグ&ドロップするとiTunesのブック・ライブラリに登録される。後はiPadを同期すればiBooksの本棚に現れるので、見え方のチェックなどができる。ここまではちょっと手間さえかければ簡単に誰でもできそう。仕様と実装上の差異とか日本語での問題とかは知らない(笑)。

ibooks

さて、大きな問題はオンライン出版してiBookstoreの本棚に並べることね。Appleは個人出版の窓口として公認アグリゲータ(Apple Certified eBook Aggregator)を選んでいるので、そのサービスを利用すれば簡単に済みそう。ePub書類の変換を行ってくれるところもある。このあたりに日本語情報があります。

でも、アグリゲータを通さずに個人出版したい場合には、iTunes Online ApplicationからAppleに直接申請できるように思える。ポップアップ・メニューからBooksを選んで、Apple IDなどを入力して進めると以下のような登録フォームが現れる。

ibookstore_online_application_m

ここで必要となるのはUSのTax IDとISBNだね。Tax IDはApp Store開店時に多くの人が苦労したSSN / ITIN / EINだから、これはW-8BENでなんとかなるのかな? 残るISBNは個人でも図書コード取得でできるみたい。

というわけで、ものは試しにやってみようと思っていますが、何か変な障害・障壁が現れるかもしれませんね〜くわばらくわばら

【追記】すでに条件が整っている方は、ささっとiBookstoreに申請して結果を教えてくださいませ〜

目を閉じて見るセカイ

先日、セカイカメラ for iPadがメデタくリリースされました。カメラのないiPadでセカイカメラかぁ?と目が点になりそうですが、これがとっても示唆的な存在なのです。

iPad版セカイカメラが行なっていることは、ライブ・ビューの代わりに壁紙を貼付けること。そして、現在位置だけではなく、世界中の任意の地点(現在は11ヵ所)に移動できること。この2つ以外は基本的にはiPhone版セカイカメラと同じだと考えていいハズ。画面が大きいとか、フォト・タグは投稿できないとか、コンパスがないので自動方位調整ができないとか、細かな違いも少なからずあるけどね。

US特派員が送ってくれた画面キャプチャーはこんな感じ。彼は西海岸にいながら、エアタグを通じて秋葉原の様子が分かるし、現地にいるユーザとコミュニケーションも取れる。

sekaicameraipad_akiba

ちょっと思考実験をしてみるね。iPhone版セカイカメラを起動して、カメラの前に雲海の写真を置けば、雲海の上にエアタグが浮かぶことになる。エアタグは眼前の風景から切り離されるけど、そこに存在する情報に他ならないよね。さらにGPSを取り出して、そのGPSを万世橋交差点あたりに置いてみる。これで秋葉原周辺のエアタグが表示される。ついでにカメラの前にはアキバ街の写真を置いておく。これがiPad版セカイカメラの動作。

考えてみれば、もともとセカイカメラは2つの目を持っていた。ひとつの目はiPhoneのカメラで、その場の光景を見ている。もうひとつはGPS(とコンパス)で位置情報データベースを見ている。これまではそれらが同じ位置にあり、2つの視界が空間的に一致していた。だけど、iPad版ではカメラの目を閉じてセカイを見ることになった。もうひとつの目も幽体離脱してセカイを自由に飛び回っている。

それじゃ拡張現実じゃないという意見に対しては、その通り、と言うしかない。もっとも頓智・CEOイグイグによれば、セカイカメラはARに捕われないといった趣旨の発言をしていたから、希代の魔術師ウィリー・ウォンカーの面目躍如だよね。カメラの不在を逆手にとって、iPadでセカイカメラ(の発展形)を走らせてみせる手腕が鮮やか。

だから、目を閉じることで見えるセカイがあるんだよ、きっと。それを裏付けるように、セカイ各地の壁紙には絵葉書のようにコテコテの写真が選ばれている。これは明らかに意図的だよね。絵葉書がそうであるように、それは存在(感)証明でしかないってことを如実に示している。あるいは銭湯画の富士山だよね。居ながらにして世界旅行みたいな。

逆に言えば、目を見開いても見えないものがある。手で触れても感じられないものもある。五感は私たちの根底であり、他に替え難く重要だけど、それだけに終始していては延髄反射に過ぎないよね。五感を超えて感じ取るものこそが重要。目に見えないものを見るのがセカイカメラの本質だと思うけど、そう考えるとiPad版セカイカメラもしっくりくるハズね。ラブ。

iPadを待ちながら…

実際にはiPadは何台か手元にあるし、iPad用のアプリケーションも何本かリリースしているので、iPadそのものを待っているわけじゃないけど、iPadが国内発売されて多くの人が手にする前に、私が忘れてしまう前に、少しだけ書いておこうと思う。

それは2010年1月28日にiPadが発表された時に感じた印象に遡る。

「何それ?」

私もそうだったけど、多くのギークな人やスペシャリストな人は、それほど感銘を受けなかったんじゃないかと思う。新しいジャンルの製品が登場したことは間違いないが、それがあまりにも順当だったからね。その後にSDKをインストールし、シミュレータでiPadアプリケーションを動かした時にも、その印象は変わらなかった。

それはツマラナイくてガッカリという否定的な印象ではなくって、当たり前過ぎて違和感がなさ過ぎるって感じ。すぐ横にiPadがないのが不思議なくらいで、鞄を開ければそこに入ってるんじゃないかと思っていた。4月になってiPadを手にしても、昨日までなかったような気がしない。ずっと以前から使っていたような錯覚に陥る。

だから「大きなiPod touchでしょ」という見方はまったく正しい。

what_is_ipad

一方で、周辺ではiPadが欲しいというフツーの人の声が多かった。街で使っていると「それiPadですか?」とフツーに人に声を掛けられる。最近ではiPadをフツーの人が予約したという話をよく聞く。5月末の発売以降iPadを目にする機会が多くなれば、iPadを購入する人が飛躍的に増えるんじゃないかな。もしかしたら、iPhone以上にiPadは売れるかもね。

Steve JobsはiPhoneを電話の再発明と言ったが、iPadはコンピュータの再発明なんだよね、きっと。そしてiPhoneが電話どころではなかったように、iPadはコンピュータどころではなくなる。iPhoneによって世界が変わることを目のあたりにしたけど、iPadによってさらに世界が変わってしまう。それは専門家の御託ではなく、フツーの人のフツーの感覚によって成し遂げられるんだ。それがAppleの閃光のように研ぎすまされた創造と戦略ゆえだとしてもね。

…と情緒的な文章しか書けないくらいに、iPadは正しい。

【追記】冒頭に書いたように、私は至って冷静と言うか醒めてるんだけどね。

5/20はモバイルカフェで公開対談

毎週木曜日に開催しているモバイルカフェではスペシャルイベントとして、世界的にも先進的な音楽誌として知られるサウンド&レコーディング・マガジン編集長の國崎晋さんをお招きして公開対談を行ないます。

サンレコ&國崎さんと言えば業界最速の話題を鋭くも的確な視点で誌面展開し、泣く子も黙る存在ですね。実際にも相当早い時期に佐近田展康さんのMax/MSPの連載を敢行し、ノイマンピアノの「トランスMaxエクスプレス」、「2061:Maxオデッセイ」、「Maxの教科書」などの書籍でもお世話になっています。iPhoneではD.O.I.さんと対談させていただきましたね。

そのような方がモバイルカフェにいらっしゃると言うことは、アレしかありませんアレ!そうですアレですアレ!アレしかないでしょう。と言うワケでお楽しみに!見逃した方は末代までの不覚ですよ〜必見。

kunisaki-aka-talk_m

 モバイルカフェ・スペシャル
 國崎晋×赤松正行 公開対談
音楽とテクノロジー、未来からの照射

 日時:2010年5月20日(木) 19:00~21:00
 場所:ドリームコア2F 【地図】
参加料:無 料

國崎 晋
サウンド・クリエイターのための専門誌『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長。同誌はミュージシャンやプロデューサー、エンジニアへの取材を通じて、音楽制作やコンサートの現場を数多くレポートしているほか、さまざまな音響機器の使いこなし、ノウハウや新製品のレビューなどを掲載、プロ/アマ問わず多くのクリエイターの情報源として重宝されている。

赤松 正行
1997年 IAMAS助教授に就任。2002年より同教授。映像やネットワークなど様々なメディアの制作を手掛け、近年はモバイル・デバイスにおける表現研究や、人と社会への影響の考察に取り組んでいる。特に、開発したiPhoneおよびiPad用ネイティブ・アプリケーションは30個を超え、App Storeで公開している他、数十台のiPhoneによるパフォーマンス「Snowflakes」などの作品制作や、ソーシャルARシステム「セカイカメラ(頓智・)」などへと展開している。

5/7はソウルでレクチャー

以下のように、5月7日に韓国ソウルでレクチャーを行ないます。

May 7th, 2010

10:00 – 11:30 Dongguk University
14:00 – 16:00 Art Center Nabi

nabi-image

これはNabiが行なっているレクチャー・シリーズの一環らしいですが、4月下旬に急に依頼が来て以降ドタバタ続きで良く分かりません(笑)。日程調整も二転三転した挙げ句に一日に集中しちゃいました。ま、韓国ではよくあるパターンかも。ただ、他にも今年後半のイベントのミーティングがいくつかあるので、それなりに慌ただしくなりそうです。

ちなみに、このシリーズはLayarSmule、それにNokiaのキー・パーソンがレクチャーをしているので、なんとなく求められているものが分かりますね。また、このNabiはSamsung/SK Telecomが経営しているアート・センターで、日本で言えばICCみたいな感じです(docomoが経営している点でも似ていますね)。韓国はハイテク好きの割にはモバイルでは遅れを取っているっぽいので、このあたりで一発逆転を狙っているんでしょうね。ガラパゴス化した日本とは異なる世界を探求してきます。

なお、韓国ではiPhoneをKT Telecom(韓国のキャリアNo.2)が発売中、SK Telecom(韓国のキャリアNo.1)は今年中にアンドロケー12機種発売予定の無茶ぶりとか。

Thoughts on Flash

ここ何週間かiPhoneに対するFlash騒動があって、嫌気がさした(?)Steve Jobsがきちんと申し渡しておくぞ!とばかりに「Thoughts on Flash」なる見解を4月末に出したのね。これに対するコメントや分析がTwitterやBlogなどでいくつも出てるんだけど、意外と触れられていない点があるので、ここで書いておくね。

この騒ぎに興味がない人も多いと思うけど、要は、iPhone(およびiPad)ではFlashコンテンツがどんな形にしろ利用できないってことね。もともとAdobeはFlash PlayerをiPhoneで動作させることを目論んでいたけど、それが拒まれ続けたので、AdobeはFlashコンテンツをiPhoneアプリケーションに変換する技術を開発したんだ。でも、AppleはiPhone SDKの利用規約(3.3.1)を改訂し、Flashで開発したアプリケーションも排除することを打ち出したというわけ。そんなこんなで、iPhoneでFlashが動かないのはケシカランみたいな声が上がったり、上がらなかったりするんだけど…

flash_cs5

でも、そもそも話として思うのは、初代iPhoneの頃、つまり3年前から、iPhoneではFlashをサポートしないとAppleは明言していたってこと。だから、Adobeが考えた抜け道は、狂人の妄想、粘着質な謀計、脳天気な空騒ぎでしかないってこと。Appleからすれば迷惑な話で、ふりかかる火の粉を振り払わざるを得ない。何度も同じことで無駄な時間を費やさせないでくれって程度なんだろうね。

ちょっと乱暴な喩えだけど、iPhone、iPad、そしてApp Storeは法治国家(もしくは契約社会)なんだ。君主Steve Jobsが統治しているとしてもね。そしてその法の元では、麻薬Flashは禁止されていた。一方、麻薬王Adobeはアノ手コノ手で麻薬を広めようとして、ついには適法性の高い合成ドラッグまで作っちゃった。だけど麻薬を許すわけにはいかないので、君主は法改正をして合成ドラッグも禁止した。って感じ?

まぁ、心情的にはAdobeがカワイソ~って思う人がいても不思議ではないし、Flashがメシの種な人は困ったちゃんかもね。ただ、元々そうだったのだし、実際にも何も変わっていない。ただそれだけ。有り難いことに私たちは囚人じゃないんだから、推進派の人は麻薬が合法である国に移住すればいいと思うよ。これまでもiPhoneアプリケーションの審査問題で愛想を尽かした人もいたしね。

iron#0: iPhone/iPad概論

個人的には2007年6月にUSで初代iPhoneが発売された時からiPhoneに関わってきたから、もうそろそろ3年になろうという今日この頃。そして、2008年7月に日本でiPhone 3Gが発売される前後から、十数回に渡って講演や講義などでiPhoneについて語ってきたので、このあたりで簡単にまとめておこうと思うのね。それは先日USで発売されたiPadを含めて、同じ観点から考察できると思うからでもあるんだ。もちろん、iPod touchもあるけどね。 iphone_ipad_ipod_touch-400x286 そんなわけで、論考のコードネームは「iron」、iPhone/iPad概論のベタな略です(すみません〜)。次のトピックに分けて少しずつ書くつもりだけど、これらも適宜変更するかもしれないです。

  • iron#1: 透明なデバイス
  • iron#2: 身体的なデバイス
  • iron#3: 全世界的なデバイス
  • iron#4: 契約的なデバイス

ところで、デバイスという言葉が並んでいるけど、それは物理的な対象として分かり易いという理由でしかないよ。iPhone/iPadはハードウェアだけではなく、OSやGUI、そして星の数ほどあるアプリケーションを含めた総体としての存在だからね。実際にも3代に渡ってiPhoneを使ってきて強く感じるのは、ハードウェアは文字通りハコでしかないってこと。そしてソフトウェアもどんどん進化し変容するから、本当に重要なのは、ある種の精神性なんだと思う。リチャード・ドーキンスが言う「生物=DNAの乗り物」に似ているかな。

iPadの国のアリス

今日はティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」の日本公開なので、それにかこつけてAtomic Antelopの「Alice for the iPad」について少々。余談ながら、USでは3/5に映画が公開されているので日本では1ヵ月少々遅れ。劇場映画は、オールドウェイブなエンターテイメント・メディアとしては、まだまだ元気なほうかもしれないけど、このようなアクセス性の悪さは今後の命取りになりそう。

さらに余談ながら、子供魂一直線なディズニー版アリスはともかくとして、ヤン・シュヴァンクマイエル版アリスを超えるか否かが、個人的なティム・バートン版への興味のひとつ。さらにさらに余談ながら、IMAXなどの3D版ではなく、通常の2D版で観る予定。Avatorのようなゴージャスな幻想より、ティム・バートンお得意のチープな幻想の方が、書き割りっぽくて3D映えしそうなんだけど、悲しくもないのに涙がボロボロ出る過酷な視覚装置に耐えられないのね。

さて、Alice for iPadは、その名の通りiPad専用の動く絵本といった風情の50ページの電子書籍アプリケーション、物理シミュレーションを活用したアニメーション20種類付き。もちろん、オリジナルはルイス・キャロルの物語、ジョン・テニエルの挿画による「不思議の国のアリス」。最初だけ有効なプレミア価格っぽい1,000円(US$8.99)がやるせないけど、無償のLite版もあるので、取り敢えず試してみるといいね。

それで、オールド・スクールの人たちが口を揃えて言うには、これはCD-ROM時代(1990年前後)のマルチ・メディア・タイトルの再来だ、ってこと。多くの人が既視感による軽い目眩に襲われている。私もそう思う。直接的な関係はないけど、当時の作品には金子國義(絵画)+加藤和彦(音楽)による「Alice」ってのもあった。

Atomic Antelopの連中も軽くCD-ROM時代を体験していそうだし、新しい皮袋に古いワインを入れようと思ったんじゃないかな? それは全然独創的ではないし、鮮やかな衝撃に欠ける。ただ、単純な発想や古いアイディアでも、ある程度のクオリティで最初に実現すれば勝ちってことになる(誰も見向きをしない場合もある)。そして(再)発見された市場に魑魅魍魎が集まり、活況化すると同時に殺伐としていく。だから先駆者も楽じゃない。卵を立てたコロンブスも、後年は不遇を重ねたようにね。

ところで、CD-ROM時代の終焉から20年ほどを経て、今日のモバイル時代に何故インタラクティブ絵本が復活するのかと言えば、その間のインターネット/WEB時代が実はコンテンツ鑑賞に適していなかったからなんだろうね。通信帯域と通信費用の問題もあるけど、それ以上にインターネットはパッケージという概念が成立しにくい。そして、実体感のない雑多な情報が混在し、縦横無尽のリンクが誘いかける世界では、ユーザの関心が一定の場所に留まることはないからね。

だから、AjaxとかFlashとかで同様のコンテンツを作ることは可能だろうし、実際にも結構作られているんじゃないかと思うけど、それらが話題になることはない。ふ〜んって感じでオシマイだから、コンテンツから対価を得ることもできない。せいぜいがGoogle税を納めて僅かな間接対価を得ることにすがるしかない。それって制作者や表現者にとって屈辱以外のナニモノでもない。

ここでもオープンなインターネット的状況が抱える問題点が露呈していると思うな。それが悪いってことじゃなくって、それだけでは済まないってことね。インターネット的オープン性を確保しながらも、ある種の囲い込みによる洗練が必要とされていると思う。それがiPhone/iPadでの垂直統合型の成功だし、App Storeと煌めくアプリケーション群によって加速されている。そのような場所であるからこそ、古くて新しいジャンルが舞い戻ったってわけ。

【追記】「それからのアリス」を制作していた頃は、プロトタイプたる「地底の国のアリス」からシュヴァンクマイエルの絵本まで結構買い込んでいたので、ちょっとしたキャロリアンだったりします(でも本当にちょっとだけ)。

OSCライブラリの比較

MIDIが機能的に不十分なのは周知として、かと言って代替えの決め手がないのが昨今の音楽業界のツライところ。有力候補はOSC (Open Sound Control) ですが、これもちょっとパッとしない。でも、まぁMaxもSuperColliderも標準対応なのでOSCを使っちゃうワケですが….

それでiPhoneやiPad用のOSC対応アプリケーションを作る場合には、OSCでの送受信を行なうライブラリ(フレームワーク)を使うのが簡単。OSCライブラリはいくつかあるので、ちょっとまとめてみました。

osc-library-comparison

この表でSuporrted Data Typesの記号の意味はOSCの仕様に従っています。また、Response Time(応答時間)は、MaxからiPhoneにOSCメッセージを送り、それに応じたiPhoneからOSCメッセージが送られてくるまでの時間をミリ秒単位で計測し、0.1秒間隔で1000回行なった結果の平均です。つまり、通信は2回行なわれていて、Maxでの送受信にかかる時間も含まれています。片道なら、この数値の半分ですね。Standard Deviationは1000回分の計測値の標準偏差です。

さて、表にまとめたものの、これでますます悩ましくなりました。以下、簡単にコメントしておきます。

ObjCOSCは実測値は優秀ですが、基盤となっているOSC-Kitが古い時代のものでサポートされないそうなので、将来に渡る使用には不安が残ります。ObjCOSC自体もWEBサイトが消滅しているようです。

VVOSCは機能的には優れているんだけど、処理時間も標準偏差も大きいのがイケてません。他のライブリに比べて4倍くらい時間がかかって、しかもバラつきが大きいので演奏的なリアルタイム性の高い用途には向かないでしょうね。

bboscは処理時間も短く、機能的にもまずまずなのですが、計測中に1〜2秒間無反応になることがありました。私のコーディングがイマイチなのかもしれませんが、WEBサイトにはサンプル等が乏しく、原因は解明できていません。このままじゃちょっと怖くて使えませんね。

libloも処理時間や機能は良好とは言え、こやつはC言語インターフェースなので、Objective-Cと混在させて使うための知識やテクニックが必要になります。プログラミングの知識が少ない初心者は手を出さないほうが無難ですよ(これに限らず、私に質問しないでね〜)。

残るWSOSCはOSCメッセージの処理だけでデータの送受信機能を備えていないので、計測をしていません。OSC-Kitは前述の理由で却下。ofxOscoscpackWOscLibなどのC++ライブラリは個人的にはキライなので、これまた却下。

と言う訳で、決定打を見いだせないままのレポートになっちゃいました(残念)。内容的な間違いや新しい情報があれば、ぜひぜひご連絡下さいね〜。